禁煙と転職とモテたい願望

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映画「キック・アス」はビック・ダディのイカれ具合がマジヤベえ!

今更ながら『キック・アス』を見た。

 

NYに住むデイブ(アーロン・ジョンソン)は、コミックオタクでスーパーヒーローに憧れる平凡な高校生。ある日、インターネットで買った自前のスーツとマスクで、自分もヒーローとして勝手に街で活動を開始。何の特殊能力も持たない彼は、初出動のときにあっさり犯罪者にやられるが、その捨て身の活動がネットで話題になり“キック・アス”の名で一躍有名に。やがて高度な訓練を受けた美少女ヒーロー“ヒット・ガール”(クロエ・グレース・モレッツ)とその父“ビッグ・ダディ”(ニコラス・ケイジ)の力を借りて、犯罪組織に立ち向かう。(アマゾンより抜粋)

 

感想としてはアクションが最高だったけど、同じくらいに劇中でのそれぞれのヒーローとしてのあり方が面白かったと思う。

 

例えば主人公のデイヴは、ギークな青年で、悪に立ち上がる必要性がないことが面白い。

 

劇中で彼は母をなくしているが、自身で語ったようにあくまで突発性の事故のようなもので誰が悪いわけでもない。単純に正義の味方に憧れ、そして実行しただけ。だからこそみんなの胸に響いた。理由を知らないけれども、目の前で暴行を受けている人がいたら救いたい。そんなヒロイズムを傷つきながらも達成した。いや、達成してしまったからこそ、みなが望んでいたヒーローとして一種の社会現象にまで発展した。

 

そして出来上がった彼は等身大のヒーローという虚像だけれども、彼自身はそれに見合う力は最後まで得ることはなかった。

 

最後まで彼の武器はただの小市民の勇気だったわけだ。そこがとても良かった。

 

ヒットガールはあんなにかわいいのにひたすらにスタイリッシュ。そして笑顔で敵をバッサバッサとなぎ倒していくグロさ。特にギャングの足をぶった切ったり、女ギャングを問答無用でぶっ刺すシーンは正直言ってダレていた中盤をグッと引き締めた。配信カメラの前での口上やアジトでのカチコミシーンは、スカッとするほどに爽快だ!これだけでこの映画を見る価値がある。

 

そして特筆すべきはビッグ・ダディだ。多分作中で彼が一番イカれてると思う。ギャングのボスを倒そうとする理由はわかる。劇中での回想は、アメコミ風に描かれていてあまり悲壮感は感じないさせない演出になっているがなかなかのものだ。

 

真っ当に社会が望む正義を信じて警察官となり、職務を全うしていたところで麻薬売買の罠にはめられて投獄され、かつ間接的にとは言えそのせいで愛する妻を失った。それでも自分の個人的の復讐のために自分の娘も巻き込むのは気が触れているとしか思えない。そんでもって、娘のことを本当に愛してる。そして信頼してる。これがまじでイカれてる。

 

日常パート(?)での彼らはどこから見ても普通の仲のいい親子だ。でもって話を聞くとほしいプレゼントが犬よりもバタフライナイフの方が安心するような倒錯ぶり。一見して、愛娘も復讐の道具にしているクソ親父に思われるかもしれないけれども、そう思わせない死に際や、言動からは愛情と信頼を確かに感じた。これは演じたニコラスケイジの演技がスゲぇと思った。あれが彼なりの最大限の愛情だと思うと、彼は投獄されて正義に狂ってしまったけれど、確かに人の親でもあろうとしたのだろう。

 

彼は復讐に徹しきれなかったのだ。自身を単純に復讐者ではなくヒーローにしたのは娘のためだろう。

 

ヘルシングという漫画のキャラクターにアンデルセンというキャラクターがいるのだが、彼の言葉に「俺は生まれながら嵐なら良かった。脅威ならば良かった。一つの炸薬ならば良かった。心無く涙も無い ただの恐ろしい暴風なら良かった」というセリフがある。思うに彼も非道になりきれなかったのだ。徹することが復讐への最短ルートということはきっと理解していたはずだ。それでも彼は正義の味方と自分の立ち位置を決めた。ただ、復讐するのは正義の味方の仕事ではない。苦悩する中で、きっと最終の妥協点として正義そのものになろうとしたのだ。

 

マスクをはめているのはキック・アスとヒット・ガールは、きっとヒーローとはそうあるべきからと思っているからマスクを被り、ビッグ・ダディはきっと父親と正義のヒーローとの最終的な境界線を分けるために被っているのだ。

 

だから彼の活躍シーンは完成された動きだった。最小の動きで最大の戦果を稼ぎ、無慈悲に悪を誅する。まさにヒーローだ。なおかつ、終盤に囚われ、嬲られ、火に焼かれても醜く喚くわけでもなく構えていたのは己を捨ててヒーローという存在になっているからで、窮地に陥ったヒット・ガールへ助言をできたのもそのためだろう。その隣では燃えていないデイヴの方がアワアワと慌てているけれどそれが当然の反応だ。このシーンはマジで狂ってると思った。

 

けれども、その最期が泣ける。心配をさせないように娘を気遣い、なんならウィットに富んだジョークのような言葉まで投げかける。暗闇の中でみえる微かな表情と声のトーンだけで優しさと愛を感じる。復讐に始まった親子二人三脚だったけれども、その終着点は自分の悲願が果たされなかった無念よりも、愛娘が無事でいたことを安心する父親でその生涯を終えることができたのだ。

 

この作品はヒーローの登場しないヒーロー映画だ。一般人同士が争うから当然のように血は出るし、銃弾の一発で簡単に死ぬ。デイヴの成長物語という表面が、上手いぐらいに暴力の生々しさを覆っている。

 

ヒーローになろうとした主人公と、ヒーローとして育てられたヒット・ガールという少女。そしてヒーローという存在自体になろうとその父親。そして最終的に誰もがヒーローにならず、個人としての道を選んだ。劇中でデイヴが言った「ケイティが心配するからヒーローをやめる約束をした」というセリフがあまりに的を得ているのではないか。僕らは正義のためではなく、自分のために僕らのままで戦うしかないのだ。

 

最期にこれだけ言いたい!

 

惜しいのはただの小市民であるはずの主人公が問答無用でガトリングをぶち込んだりしたり、ボスに容赦なくロケランをかまして「成し遂げたぜ!」なんて、満足した顔をしてるところがめっちゃ違和感があった。

 

お前は小市民だろ!?何、「自分、いつでも悪いやつぶっ飛ばしてますから」なんて顔してんだよ!

 

まあ、これて後ろ髪ひかれることなく引退できるって、安心してタガが外れていたってんなら、気持ちもわからんでもないけど。それが最後の最後でモヤモヤっとしたのが残念だった。

 

クソかっこ悪くわめきながら突貫したり、人を殺したことを悔やむんでヒットガールからの言葉で救われるシーンがあったりしたら文句無しだったのにな〜。

 

最後にだが、マーカスがいつ裏切るかヒヤヒヤしたけれども、ヒット・ガール親子の支えてで有り続けたことはとても嬉しく思った。

 

とりあえず何も考えずに単純に楽しい映画が見たいと思うのならおすすめの一本。